本日朝、トランプ大統領の『解放の日』関税が国際貿易裁判所で違法との判断をされました。トランプ大統領が関税措置を正当化するために国際緊急経済権限法を適応したのは不適切だと判断した訳です。国際緊急経済権限法とは、特定の緊急事態下で様々な金銭取引に関する権限を大統領に付与します。トランプ大統領は米国が抱える『大幅で持続的な』貿易赤字を問題視しています。
それが国家安全保障および経済に対する『異例かつ並外れた脅威』に当たるとして、同法を用いて関税を導入することが許されると主張していました。今回国際貿易裁判所での判決を受け、トランプ大統領側は提訴を主張しています。つまり連邦高裁を経て連邦最高裁へ進むルートを辿る事となります。非常に複雑な事態となっており、理解に苦しむ状況です。
ただ、例え連邦最高裁の判決で関税が違法との判断があった場合でも、トランプ大統領は無視する可能性が高いです。つまり『解放の日』関税はなくならないと考えています。つまりこの報道を受けた株価の上昇は、そのうち戻されると想定しています。またこのことによって相場見通しを変更することはないと考えている訳です。そもそも『解放の日』関税はグローバリズムを否定しました。
今まで先人が培ってきた国際協力体制を踏みにじったわけです。その関税が判決で違法との判断をされたからと言って、国際関係が戻るわけではありません。EUは米国との距離を置きつつ中国と外交を進め、日本もそれに倣い始めています。トランプ大統領がすぐ終わらすと言ったウクライナ戦争は終わらず、イスラエルはイランへの警戒を強めガザへの侵攻を辞めません。
それは『解放の日』関税の弊害と言って過言ではないでしょう。つまり米国の信認が低下しているのです。株価は確かに上昇しています。しかし今後訪れるスタグフレーションの可能性を考慮すると、安心できるとは思えないのです。FRBが警戒しているように、インフレ再燃のリスクと失業率上昇のリスクは高まってきています。FRBは金融政策に関して暫く様子見姿勢を崩さないでしょう。
更にトランプ減税法案により財政規律が緩みます。それはタームプレミアム、つまり長期債利回りの上昇となって影響するでしょう。金利と株価はシーソーゲームです。金利上昇は株価下落をもたらす可能性が高いのです。つまりスタグフレーションが起きつつタームプレミアムも上昇する、そんなネガティブシナリオを想定しています。
最後に、もし関税がなくなったとしたらを考えてみます。そうなれば関税賦課による収入がなくなり、さらに政府の財政が厳しくなるでしょう。つまりタームプレミアムはかなり上昇すると考えられます。となればやはり株価には厳しい状況となる可能性が高いです。つまりいずれにせよ今の株価は楽観的であり、様子見をするのが最適だと考える訳です。