ロシア・ルーブル安はロシアにとって悪影響が大きいと考えます

   

ロシア・ルーブルが対ドルで2015年末に今年の安値を更新しました。詳しくは、ロシアルーブル、対ドルで年初来安値を更新 原油安を嫌気(ロイター)をご参照下さい。ロシア・ルーブルの推移を確認した後、その影響を考えてみたいと思います。

ロシア・ルーブルの対ドルでの推移

2014年始めの1ドル35ルーブル前後から、2015年末には73ルーブルへ2倍以上ルーブル安になっています。特に最近は原油安の影響から、ルーブルが売られているようです。

ドルロシア・ルーブルチャート
ドルルーブル201512

Investing.comより

ロシア・ルーブルの対円での推移

対ドルで円安が続いた影響が多少出ていますが、対ドルと同様に売り込まれていて、2014年の1ルーブル3.0円程度から、2015年末に1.6円前後まで半分程度になっていることがわかります。

ロシア・ルーブル円チャート

ルーブル円201512

SBI証券より

スタグフレーション

原油価格の下落が、ロシアルーブルの下落を招いています。ただし、ロシアは原油の輸出国なので、現状はルーブル安が原油価格の下落を補完して採算をとっています。その反面、ロシアは食料品をはじめとする多くの日常品を輸入しているのですが、ルーブルの下落は輸入物価の高騰を引き起こしています。

一般に、インフレと景気低迷が同時に進行することをスタグフレーションと言います。2015年はロシアはまさにスタグフレーションが起こり始めた時期でした。GDPがマイナス成長の中、為替が自国通貨安に動くことによって、輸入物価が高騰しました。

ロシア実質GDPの推移と予測

ここで、ロシアの実質GDPの推移と予測を見ると2015年、2016年はマイナス成長が見込まれていることがわかります。(IMFによる2015年10月時点の推計)

ロシアGDPの推移予想

世界経済のネタ帳より

企業部門への影響

ロシアの企業は、30%~50%を外貨建てで資金を調達していて、そのほとんどが低金利のドル建てで調達されています。為替がルーブル安に動くと、外貨建てで調達した負債に、為替損が発生します。詳細は、コラム:新興国通貨の対ドル下落はまだ序の口=竹中正治氏(ロイター)を参照下さい。

地政学的リスク

まず考えられるのは、原油安に伴う景気低迷と物価高が、国民の不満と不安を産み、テロ等を引き起こす可能性です。

また、ロシアの戦闘機がトルコの領空を侵犯したとして撃墜されたことから、ロシア政府はトルコに対して農産物の輸入禁止を はじめとする経済制裁を行ないました。これが、さらなる食料品等の物価高を引き起こしてしまう可能性もあります。詳しくは、原油相場の低迷長期化の影響を考える (第一生命研究所)を参照下さい。

まとめ

ルーブル安は、ロシアに悪影響を与え、その影響は非常にリスクが大きいものだと考えます。まだ、通貨危機等、実体経済に深刻な影響を与えてはいませんが、注意深く見る必要があると思います。ちなみに、MSCIエマージング・マーケット・インデックスのロシア株の構成割合は4%前後です。指数全体に与える影響は大きくありませんが、新興国投資信託に投資する際はロシアの影響も考慮して投資判断をしましょう。

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