2022年10月1週振り返り(英国の危機)


おはようございます!週間では、ダウ平均が2.92%安、S&P500が2.91%安、ナスダック総合が2.69%安とそろって3週続落。9月月間では、ダウ平均が8.84%安、S&P500が9.34%安、ナスダック総合が10.50%安と大幅に2カ月続落しました。四半期では、ダウ平均が6.66%安、S&P500が5.28%安、ナスダック総合が4.11%安となり、S&P500は2009年以来の3四半期続落です。

英国が揺れています。トラス新政権が先週末発表した大規模減税と国債大幅増札計画がきっかけでした。そもそもトラス新首相は早期減税を掲げ選挙に勝ちました。つまりそれは民意を反映していたと言えます。しかしBOE、英国の中央銀行は利上げをしています。つまり金融引き締めをしている最中に財政緩和策をすると言う、例えるならばアクセルとブレーキを同時に踏むという政策が行われることになりました。これに対してマーケットはポンド、英国株、英国債、の売りで反応しています。

この問題自体分かりにくいのですが、更に水曜日にBOEが発表した長期国債の購入がマーケットを混乱させています。急騰した長期国債利回りを抑えるための緊急手段でした。それは年金などの資金がマージンコールを食らい、更に急騰する可能性があるからと言う理由からでした。理由自体は分かりますが、政府が赤字国債を発行しそれを中央銀行が引き受ける行為は財政ファイナンスに当たります。それは一般的にはインフレを招く禁じ手です。いくら国債の購入が時限措置とは言え、まともな政策ではありません。

また国債の購入は緩和策に当たります。利上げで金融引き締めをしながら一方国債を購入して緩和をする事は先ほど述べた通り、アクセルとブレーキを同時に踏んでいる事になります。分かりやすく言うと、財政政策は減税で『緩和』、金融政策は利上げで『引き締め』、国債購入で『緩和』とあべこべな政策を行っているのです。そもそも英国はインフレ率が10%と先進国の中では一番高い国です。その国が減税を行うというのが問題なのです。つまり減税は消費を上向けインフレを加速します。

つまり更なるBOEの利上げペース加速が必要になるのです。その効果も疑問視されます。結局減税効果を利上げ効果で相殺するからです。そうなると残るのは財政赤字になってしまいます。マーケットがまず売りで反応したのは国債増発による財政懸念からです。保守党はそもそも健全な財政政策を行ってきました。ジョンソン前首相はポピュリズムから生まれた首相でしたが財政政策は比較的健全でした。しかし今回のトラス新首相は大衆が減税を望み、それを公約として誕生したわけで簡単にはそれを引っ込める事はできません。

つまり詰んでいるのです。わずかな可能性としては保守党議員達がマーケットの反応を見てトラス新首相に退陣要求をする事ですが、そう簡単にはいかないと思います。それよりも早期の懸念は時限措置の国債購入が終了する10月14日です。減税と国債増発計画が撤廃されなければ、また英国債は急落するでしょう。そうなればポンドはまた急落します。そしてポンド安は輸入物価を押し上げ更なるインフレを招くのです。つまりまずやらなければならないのがBOEの緊急利上げなのです。

緊急利上げによりポンドを押し上げつつインフレを抑える意思を表明しなければなりません。今の所BOEは11月の政策決定会合まで利上げする意思がありません。しかし10月中に緊急利上げに追い込まれる可能性は高いと考えています。その利上げ幅は最低100bpsは必要で、サプライズを起こすなら200bpsも必要かもしれません。それは英国を更なる不況へと追い込むでしょう。つまり先ほど述べた通り減税は結局不景気を起こしてしまうのかもしれません。何が問題なのか、不景気に近づくとどうしても大衆迎合的、つまりポピュリズムが台頭します。

政治は民衆の投票によってきまります。それが国にとって明らかに悪い方向だとしても、それが進められてしまいます。国民の意思が反映された政策だからです。民主主義の弱点と言っても良いかもしれません。しかし私は民主主義を否定しません。独裁主義だって間違うからです。中国の共同富裕のような政策の事を言っています。今回の英国の減税もどうなるのかは分かりませんがいずれは解決されて行くはずです。明らかな失策ではありますが、民主主義はそれを経験して修正するのです。

今週もお疲れさまでした。今週はのんびり過ごしています。最近ローソンで売っている1000円ワインにはまっています。1000円の割には美味しくてとても良い時代が来たなと思いました。来週もよろしくお願いします。良い週末をお過ごしください。